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線香の匂いがする夜

こわがりナイト 10時間前
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私は、地方の病院で夜勤をしている介護士です。 もう慣れたつもりでした。深夜のナースステーションに響くモニター音も、薄暗い廊下の蛍光灯のちらつきも。 けれど、あの夜だけは違いました。 今でも、あの“匂い”を思い出すと吐き気がするほどです。 ⸻ ある晩、同じ病棟のベテラン看護師が言いました。 「ねえ、人が亡くなる時ってね、線香の匂いがするのよ」 彼女は真顔でした。 「菊の花みたいって言う人もいるけど、私には線香。あの匂いがしたら、誰かが逝くの」 冗談半分に笑おうとしたけれど、彼女はただ遠くを見つめていました。 その夜は、なぜか廊下の空気が重く感じました。 ⸻ 数週間後、私の夜勤中にその瞬間が訪れました。 午前0時を過ぎ、ようやく終わりが見えてきた時――。 ナースコールではなく、モニターの「ピ――――」という長音が病棟に響いたのです。 慌てて駆けつけると、ベッドの上の男性は、もう息をしていませんでした。 看護師が淡々と処置を始め、私は指示されるまま動きました。 手が震えていました。 「死」という現実の前では、マニュアルなんて意味をなさない。 ただ、冷たくなっていく体を前に立ち尽くすことしかできませんでした。 そして、異変はその直後に起きました。 ナースコールが3つ同時に鳴ったのです。 けたたましい電子音が重なって、まるで誰かが「呼んでいる」ように。 その病棟には、重度の認知症や寝たきりの方が多く、普段ナースコールが鳴ることなどほとんどありません。 私と看護師は顔を見合わせ、同時に立ち上がりました。 最初の部屋に入ると、普段は一日中目を閉じているおばあさんが、上半身を起こしていました。 両手を合わせ、何かをつぶやいています。 「……あの人、迷わないように……」 鳥肌が立ちました。 別の部屋でも同じ。 お経のような声で、震える手を合わせているのです。 しかも三人全員が――。 彼らは、さっき亡くなった男性とは何の関わりもありません。 部屋も離れていて、面識すらないはずでした。 なのに口をそろえて「お見送りをしなきゃ」と言うのです。 夜中の病棟に、嗄れた声がいくつも重なりました。 まるで見えない誰かを送り出すかのように。 その瞬間、ふわりと線香の匂いがしました。 廊下の奥、処置室の方から――。 誰も焚いていないはずの香り。 甘く、湿った煙のような匂いが、私のマスク越しにもはっきり分かりました。 あ

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