これは、里帰りに祖父母の家に行った時の話です。 その日は私と父母、いとこの兄ちゃんと共に行きました。 祖父母の家に行くのは4年ぶりで、祖父母共にとても歓迎してくれました。 しかし一つ気になる事がありました。 それは二階の部屋です。 爺ちゃんに 「二階には絶対行ってはならんぞ。何があってもな。」 とすごい血相で言われたからです。 私自身二階に行った事は一度もありません。 いとこの秀兄も同じく行った事がないらしく、 「行くなって言われたら行きたくなんだよなー。どう、今日の夜中に二人で行ってみないか?」 と言われ好奇心が勝った私は 「うん。行こう。」 と言ってしまいました。 この時は、まさかあんな事になるなんて思いもしませんでした。 夜中の2時ごろ、秀兄と共に皆寝ているのを確認して2人で階段のある裏部屋へ行きました。 ドアを開くとそこは薄暗く、少し悪寒がしました。 秀兄を先頭に一段ずつ階段を登っていきました。 電気をつけてみると、意外と広く倉庫みたいでした。 そこに、何か赤い仏壇?みたいなのがありました。 赤い仏壇なんて見るのも初めてだし御札みたいなものがあちこち貼られてて私も秀兄も興味津々でした。 仏壇?みたいなものは開く扉がついていて開いてみると大きい箱が入っていました。 そこにもびっしり御札がついていて黒いヒモできっちり結ばれていました。 だんだん気味悪くなった私は秀兄に 「ねえ。もうやめようよ。」 と言ってみたけど秀兄は、 「えー。面白くねえな。これ開いたら終わりにするからさー。」 といい、その箱を開けることになりました。 ヒモをといて開けてみると、 そこには昔の小刀みたいなのと人形が入っていました。 人形は着物を着た女の子でリアルでまるで生きているみたいでした。 秀兄は小刀を見て 「これってもしかして昔のもの?すげー。」 と言ってその小刀を抜きました。 すると、その時わずかに人形の口が笑ったような気がしました。 小刀には赤い血がべっとりと付いていました。 さすがの秀兄もこれには驚いて 「ナッッナニコレッ、気持ち悪っ!」 と言って慌てて小刀を納しました。 すると突然電気が消え真っ暗になりました。 私もここから早く逃げたい気分でしたが足がすくんで動きませんでした。 私を見た秀兄は 「何してるん!早よ行くで!!」 と言いましたがなかなか動けず誰かに足をつかまれている感じでした。 おそるおそる足を見てみると… あの人形の髪が私の足をつかんでいました。 人形の目は黒目だけで口は確かに笑っていました。 しかし目線は秀兄のほうに向いていました。 秀兄は人形を見たとたん 「アッー…ァッーー…ぉお菊さん、お菊サン、ゴメンネゴメンネ…」 といい目は充血し泣きながらそう言ったのです。 私は秀兄を助けようと人形の髪を引きちぎり、秀兄の手をひっぱりましたが 秀兄は動かずおかしくなったように笑っていました。 私は泣きながら秀兄に 「ごめんね。すぐ来るから。」 と言って急いで爺ちゃんの部屋に行って爺ちゃんをたたき起こしました。 「爺ちゃん!!秀兄が!!」 と言うと爺ちゃんは顔が真っ青になり 「行ったんだな!!?二階にはあれほど行くなと言ったのに…」 と言い、急いで誰かに電話して皆で二階に行きました。 秀兄は相変わらず笑ったままで、 「お菊サン、お菊サン…」 と言っていました。 すると婆ちゃんが秀兄の頬をひっぱたいて 「しっかりせい!!あんたはお鷹やない!!秀一や!!!」 と叫びました。 すると秀兄はそのまま気を失いました。 暫くして、お坊さんがやってきて、仏壇の前でお経を唱え始めました。 秀兄は仏壇の横で寝ていましたがやがてお経が終わると同時に目を覚まし 「あれ?俺今まで何してたん?」 と言ってやっと元の秀兄に戻りました。 お坊さんが帰った後、爺ちゃんがこの仏壇にまつわる話をしてくれました。 「お前たちもこれで分かっただろう、二階に行けばどうなるのかを。 あの人形はな、昔お鷹という女が死んだ娘のお菊に似せて作らせた人形なんや。お鷹たちはこの場所で親子二人仲良く暮らしとったんや。だがある日お菊は人を殺した濡れ衣を着せられて打ち首にされたんだ。娘の変わり果てた姿を見たお鷹はおかしくなってしもうてな。自分の髪を使って人形師にその人形を作らせたんや。けどいくら娘に似た人形を作っても娘は帰って来ん。それで持っていた小刀で喉をバッサリ切って自殺してもうたんや。それを知らんかったわしらはここで土地を買って家を建てたんやが土を掘ったら人形と小刀の入った箱が出てきてな。その人形と小刀にまつわる話を知っとった人がその仏壇を建てて御札を貼って箱をしまってくれてな。秀一、お前はさっきお鷹の霊が乗り移ってしまったんや。でももう...