俺が小学生の頃の話。 俺には、年の離れた姉がいた。 当時、お袋は身籠っていて、腹の中には、俺の妹になるはずだった赤ん坊もいた。 家族構成は、親父とお袋(仮 妹)、姉、俺。 確か、夏だったと思う。 親父の実家、つまり祖母の家に盆か何かで帰省してたんだと思う。(記憶が曖昧でスマン) 祖母の家は、九州の山に囲まれた小さな村にあった。周りは山と田んぼばかりで、祖母の家の前には、小川の様な小さな川があった。 そんな場所だったから、遊ぶ場所なんか、小川でフナやドジョウを捕まえるか、山の入り口で、カブト虫やクワガタを捕まえたりする事しか出来なかった。 幸いにも村の何軒かの家には、俺と同じくらいの子供が居て、たまに遊びに来てたんで、一緒に山や小川に遊びに行ったりもしていた。 祖母の家には、倉が有り、裸電球を点けても薄暗い良く分からない物が所狭しと入っていた。 姉は、そんな薄暗い倉の中で色々な物を引っ張り出しては観察したり、変色したボロボロの本の様な物を読んだりして過ごしていた。 俺は、姉が平気で入り浸る倉が少し怖かった。 薄暗いっていうのもあるが、何となく薄気味悪さを感じていて、余り近付かなかった。 あれは確か、祖母の家に泊まって3日ぐらいした時だったか? 昼間、俺は、近所の幸太と山の入り口で、セミやカブト虫なんかを捕まえて遊んでいたと思う。 いつもは、山の入り口から奥には入らないのだが、途中から幸太の兄ちゃん(中学生)とその友達のAとBがやって来て、少し山の中に入った所に神社があり、その辺りには、大きなカブト虫やクワガタがいるから行こうと誘われた。 俺は、親父や祖母に子供たちだけで山の中に入る事はするなと良く言われてたから、最初のうちは断っていた。 しかし、そこは小学生。 幸太の兄ちゃんやAやBが話す内容に徐々に興味が湧いてきていた。それは幸太も同じ様子だった。兄ちゃん達が一緒なら大丈夫なんじゃないかと、悩む事数分で俺と幸太は二つ返事で山の中に幸太の兄ちゃん達と一緒に入った。 子供の足なので時間は曖昧だったが、大体、10分~15分くらい歩くと、小さな赤い鳥居が見え、その鳥居をくぐり暫く歩くとこじんまりとした社が見えて来た。 社の後ろには、今まで見てきたどの木より大きな巨木があった。 幸太の兄ちゃん達は、その巨木はこの神社の御神木でいたずらをするとバチがあたると教えてくれた。 なので、俺達は、御神木とは違う別の木を蹴ったり、登ったりして、カブト虫やクワガタを見付けては、その大きさに驚いたり、歓声を上げて喜んだりした。 遊び疲れて境内にある石の椅子みたいな所に座ったり、社の中を覗いたりして一頻り遊んだ後、俺達は帰った。 帰り際、社の中を覗いてた幸太は、社の中の祭壇?みたいな物の板の上に乗っていた鏡や小さな綺麗な装飾品がついた箱があるぞと俺に言われ、俺も中を覗きソレを見た。 姉が好きそうな箱だった。 もう少し良く見たくて、社の扉に手を掛けたが、幸太の兄ちゃん達に呼ばれて、俺達は、家に帰る事になった。 その帰り道。 幸太が、「明日また来て、あの社の中見てみようぜ。」と言ってきたので、俺もウンウンと頷いた。 山の入り口まで来ると辺りはもうすぐ夕暮れ時で空がオレンジ色に染められつつあった。 俺達は、色々な話をしながら歩き、祖母の家に着くと、「また明日。」と言って家の中に入ろうとした時、幸太の兄ちゃんに、「今日、山の中に入った事は内緒だぞ。」と言った。 俺は、笑顔で「うん。」と返事をして大きく手を振り家の中に入った。 夕飯を済ませ2階に上がると、姉が寝泊まりしてる部屋の前を通り掛かった。 俺は、社の中で見た装飾品がついた箱の事を姉に話したくなり、「姉ちゃん、ちょっと入ってもいい?」と襖越しに声を掛けると、部屋の中から「良いよ~。」と明るい姉の声がして俺は、襖を開けた。 そして俺は、先にお袋達には内緒だと言って、山の中にある神社の話と社の中にあったあの箱の話をした。 最初こそ、山の中に入った事を少し咎められたのだが、社の中の箱の話をしたら、興味津々な感じで目を輝かせてた。 翌日、俺が目を覚まし1階に降りると、祖母だけだった。「お父さん達は?」と聞くと「お父さん達は町へ買い物に行ったよ。」と、少しのんびりとした口調の返事が返って来た。 朝ごはんを食べる様に言われ、俺は、食卓についた。 姉の姿も無かったが、どうせいつもの様に倉にいるんだろうと思い、対して気にしなかった。 祖母特製の酸っぱい梅干しを少しかじって、ご飯を口の中に放り込んだ時、外から幸太が俺を呼ぶ声がした。 箸を置いて、縁側の窓を開けて、「ちょっと待ってて。」と言いお茶碗の中に味噌汁をぶち混んで、口の中に流し込み、酸っぱい梅干し...