639 名前:長文スマソ 投稿日:03/02/04 17:50 先月のことです。Aと俺は山へ測量に入りました。 山の測量に行く時は、最低3人で行くようにしていたんですけど 行くハズだった奴がインフルエンザで倒れて、他に手の空いてる人も居なかったんで しょうがなく2人で行くことになったわけです。 でもやっぱり不安だったんで、境界を案内してくれる地元のおっさんに ついでに測量も手伝ってくれるように頼みました。 おっさんは賃金くれればOKという事で、俺たちは3人で山に入りました。 前日からの雪で山は真っ白でした。 でも、ポールがよく見えるので、測量は意外にサクサク進みました。 午前中一杯かかって尾根の所まで測ったところで、おっさんの携帯が鳴りました。 おっさんはしばらく話をしていましたが、通話を終えると、急に用事ができたので下りると言い出したのです。 おいおいって思ったんですけど、あとは小径に沿って土地の境界やから、そこを測っていけばイイからって言われて 小径沿いだったら大丈夫かもな、まぁしゃーないか みたいなムードで、結局Aと俺の二人で続きをやることになりました。 ところがおっさんと別れてすぐ、急に空が曇ってきて天候が怪しくなってきました。 このまま雪になるとヤバイよな、なんて言いながら、Aと俺は早く済まそうと思ってペースを上げました。 640 名前:639 投稿日:03/02/04 17:51 ところで、俺らの会社では山の測量するのに ポケットコンパスって呼ばれている器具を使っています。 方位磁石の上に小さな望遠鏡が付いていて、 それを向けた方向の方位や高低角が判るようになっています。 軽くて丈夫で扱いが簡単なので、山の測量にはもってこいなんです。 俺はコンパスを水平に据え、ポールを持って立っているAの方に望遠鏡を向けて覗きました。 雪に覆われた地面と枝葉に雪をかかえた木立が見えますが、ポールもAの姿も見えません。 少し望遠鏡を動かすと、ロン毛の頭が見えたので、 次に、ポールを探して目盛りを読むためにピントを合わせました。 (あれ?) ピントが合うと、俺はおかしなことに気付きました。 俺たちはヘルメットを被って測量をしていたのですが、 Aはなぜかメットを脱いでいて、後ろを向いています。 それにAの髪の毛は茶髪だったはずなのに、今見えているのは真っ黒な髪です。 (おかしいな) 望遠鏡から目を上げると、Aがメットを被り、こっちを向いて立っているのが見えました。 が、そのすぐ後ろの木立の隙間に人の姿が見えます。 もう一度望遠鏡を覗いて少し動かしてみました。 641 名前:639 投稿日:03/02/04 17:53 女がいました。 立木に寄りかかるように後ろ向きで立っています。 白っぽい服を着ていて、黒い髪が肩を覆っていました。 (こんな雪山に・・・なんで女?) 俺はゾッとして望遠鏡から目を離しました。 「おーい!」 Aが俺の方に声を掛けてきました。 すると、それが合図だったかのように、女は斜面を下って木立の中に消えてしまいました。 「なにやってんスかー。はよして下さいよー。」 Aのその声で、俺はわれに返りました。 コンパスを読んで野帳に記入した後、俺は小走りでAのそばに行って尋ねました。 「今、お前の後ろに女立っとったぞ、気ぃついてたか?」 「またそんなこと言うて、止めてくださいよー。」 笑いながら、そんなことを言っていたAも、俺が真剣だとわかると 「・・・マジっすか?イヤ、全然わかりませんでしたわ。」 と、表情が強ばりました。 642 名前:639 投稿日:03/02/04 17:54 Aと俺は、あらためて木立の方を探りましたが、木と雪が見えるばかりで女の姿はありません。 「登山してるヤツとちゃうんですか?」 「いや、そんな風には見えんかった・・」 そこで俺は気付きました。 あの女は、この雪山で一人で荷物も持たず、おまけに半袖の服を着ていたんです。 「それ、ほんまにヤバイじゃないっスか。気狂い女とか・・・」 Aはかなり怯えてました。 俺もビビってしまい、居ても立ってもいられない心持ちでした。 そんなことをしているうちに、周囲はだんだん暗くなって、とうとう雪が降ってきました。 「はよ終わらして山下ろ。こらヤバイわ。」 俺たちは慌てて測量作業を再開しました。 天候はドンドン悪化して、吹雪のようになってきました。 ポールを持って立っているAの姿も見にくいし アッという間に降り積もる雪で、小径もわかりづらくなってきました。 携帯も圏外になっていました。 俺は焦ってきて、一刻...