会社の出張で、とある地方に勉強会に出かけた時のことです。 事務局が用意してくれた宿泊施設は古ぼけた小さな旅館でした。 「なぜよりによってこんなところを・・・」 と誰しもが思いましたが、仕方ありません。 私たちは3名と4名のグループに分かれて泊まることになりました。 ただでさえ寂れた田舎町。他の宿泊客もなく、その日は私たちのグループで貸切状態だったのです。 大部屋が2つしかなかったので、私を含む3名で1室、他の4名で1室、隣り合う部屋を使うことになりました。 勉強会と懇親会が終わって宿に戻ってきたのが夜22時ごろ。 私たちのグループ3名は心身ともに疲れていたので、早々に寝ることにしました。 部屋が隣り合っていたし、暑くて窓も開け放っていたので、隣室の4人組の話声もよく聞こえていました。 私たちの部屋のメンバーが就寝した23時ごろ。 私はうとうとしながら、隣室の人たちがワイワイとどこかへ出かけていく音を聞いていました。 隣の部屋から出て、私たちの部屋の前の廊下をどかどかと歩いていきます。 (これからまだ飲みにでも行く気か? すごいなぁ) そんなことを思いながら眠りにつきました。 やがて、隣室からにぎやかな声が響いて来て目が覚めました。 時計を見ると、深夜1時になろうかという時間でした。 正直とても迷惑でしたが、この勉強会で初めて会った人たちでしたので文句を言うこともできず、、 (うるさいなぁ。早く寝ろよな) と、我慢して寝ることにしました。 がはははははは! ぎゃーぎゃー! きゃははははは! 隣の宴会はかなり盛り上がっているようでした。 私はイライラしながらも、勉強会の疲れもあって、いつの間にか眠り込んでいました。 翌朝。 朝食の時間に、隣室だった4名の人たちと挨拶を交わしました。 「ゆうべは遅くまで飲んでましたね~。何時ごろまでやってたんですか?」 私の問いかけに、4人はきょとんと顔を見合わせ、言いました。 「え? 僕たちは静かに寝てましたけど?」 「・・・・? お酒飲んで盛り上がっていましたよね? 飲み直しに外に行かれてませんでしたか?」 「行ってませんよ。僕ら4人とも、帰ってきてすぐだから、22時半ぐらいには完全に寝てましたから」 この不可思議な宴会の声は、私と同室だった2名も聞いていました。しかし隣室の4名はそんな声、一切気付かなかったそうです。 一体あの声は何だったのでしょう。 ひとつだけ気になることと言えば、この旅館の共同便所、四隅にびっちりと盛り塩が置いてあったんです。便所にだけ。 あれが何かひっかかるんですよねぇ。