、中年男はドアを廊下に立てかけ、更に後退を続けた。 外廊下の手摺まで追い詰め、私は中年男を外に突き落とした。 下を見ると、地上の駐車場に骸が転がっていた。 悪夢から目覚めると、2ヶ月続いた頭痛は綺麗に消失していた。頭のなかに押し込んだ金属クズを除去したような感じだ。 ６．悪霊の正体推定 あの濃紺作業服の中年男が頭痛の元凶だったと推定する。奴は鈴が森刑場跡の刑死者霊で、生前は職人かなにかで、濃紺の着物を常用していたのだと思う。それを私が現代人風に「濃紺作業服の中年男」と知覚したのではないか。 それにしても悪霊に丸腰で立ち向かったのは我ながら正解だった。 このような事態に備えて枕の下に十手を仕込んでいたが、現代の警察バッチに当たる十手を持っていたら、江戸時代の凶悪犯罪者である悪霊は逃げ出してしまい、取り逃がすところだった。キッチリ仕留めて頭痛もスッキリ解消して本当に良かったです。 合掌