長文です。 30年位前のことです。 高校の卒業式の少し前、部活で一緒だった同級生の女の子が、家の近くにある和菓子店でバイトをする話をしていました。店のガラス戸に貼ってあったアルバイト募集の紙に高額の時給が書いてあったからだと。 卒業後、私は期限のある別のバイトを始めたのですが、その終了後、彼女が働いているであろう和菓子店のアルバイト募集に応募しました。 本店で面接があり、採用され、私は自宅近くの店舗の販売員の職に就きました。 卒業から1ヶ月程しか経っていないのに、店に友達の姿が無いのは不思議でした。当時、市内に数店舗を展開する和菓子屋でしたが、友達の家からも私の家からも一番近い店舗は同じでしたので、彼女がいるとすればそのお店でした。 携帯の無い時代で、本人に直接連絡するのは今ほど簡単ではありませんでしたので、「え?あの饅頭屋でバイトしたの??先に言ってくれたら止めたのに!私、すぐ辞めたわ!」と彼女から聞いたのはずっと後のことでした。 経営者のおばさんが、めちゃくちゃ性悪だったのです。 バイト仲間は全員女性で、1つ年下の高校生と、3つ上の大学生と、私の母親くらいの年齢の三人でした。シフトがあり、常時二人体制でした。 性悪経営者は本店にいたので、お客さんのいない時、私達は簡単な作業をしながらお喋りをしていました。 年上の二人は既に1年ほど勤務していて、店の事や経営者(奥さんと呼んでいました)の事を話してくれました。 ・奥さんが性悪いから、バイトが続かない。皆んな泣いて辞めていく。 ・そんなだから、奥さんは恨みを買っている。 ・どの店舗にも幽霊や生き霊がでる。 といった内容。(さっきネットで調べたら、現在6店舗あるようです。今も出るのかしらん) 母くらいの年齢の彼女も、私の在職中に泣きながら辞めていきました。 私と高校生バイトがシフトで入っている時に「饅頭にカビが生えていた」と怒鳴り込んで来たおばさんがいました。 「お詫びにこのくらいの菓子出せないのっ」と言って、ショーケースの上に並べてある箱に入った和菓子をバンバンと掌で叩いた挙げ句、「保健所に訴えてやるっ」と店から出ていきました。 私は事を収められなくて、保健所云々と事が大きくなった事を申し訳なく思い、高校生は「あんなオバハンに負けた」と、二人して泣きました。私は泣きながら、本店にいる奥さんに電話で説明しました。 私の説明した怒鳴り込んで来たおばさんの風貌が、前に泣きながら辞めていった一人と一致するらしく、また、おばさんが手にしていた饅頭が、饅頭用の包装紙ではなく、おかきの箱に使う包装紙に包まれていた事も疑わしく、本店では「辞めさせられた〇〇さんが嫌がらせに仕組んだ」という結論に至ったようでした。 その翌日、大学生バイトと一緒だったのですが、前日彼女は本店にいたようで、事情は奥さんから聞いていて、「〇〇さんならやりそうな事。」「ほら。嫌がらせ受ける程恨まれてるって言ったでしょ。」と言っていました。 因みに、この件による営業停止などの保健所による処分はありませんでした。 本店には工場が併設されていました。大学生バイトによれば、工場に男と、長い髪の女の霊が出るそうで、「工場で直接見なくても、応援で店に居れば、裏(工場)から悲鳴が聞こえるから。本店に応援で行くの、楽しみだね」とからかうように言われました。 実際、3回程本店へ応援に行きましたが、工場では働く人しか見ませんでした。けれど、店で接客をしている時、何度か悲鳴が工場から聞こえました。女子の声で「きゃーっ」とか「でたっ」とか。その都度、奥さんが「何騒いでるのっ!」などと怒鳴りながら、工場の奥へ進んで行くのが分かりました。悲鳴の主は騒ぎ続けていましたが、奥さんも怒鳴り続けていました。「ほんとに出たんですぅ…ヒック…」「そんなもん、でないっ」みたいな感じ。 最初は、悲鳴にびくっとなっていましたが、接客で忙しく、また、店には出ないと聞いていたので、だんだん対岸の火事のような感覚になっていました。 私が主に就労していた店舗は、古い木造家屋の一部を改装したものでした。 何屋さんだったか忘れましたが個人経営のお店と小さな電気店に挟まれていて、前面はガラス張り、その真ん中あたりに自動ドアがありました。ドアから入ると左手の壁におかき類の陳列棚があり、正面奥やや右手に和菓子のショーケース、右の壁側にはケーキのショーケースがありました。ドアを入ってすぐの所に商品陳列用の丸いテーブルがありましたので、テーブルが邪魔して、和菓子ショーケースが見え難いといった配置でした。和菓子ショーケースの奥には小部屋があり、ショーケースのすぐ近くに小さな小さな台所、奥には大型の冷蔵庫、あとは化粧箱を保管する棚がありました。小部屋といっても扉...