
中編
貧乏旅行
匿名 2013年9月30日
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「さっきの道に戻る前に伏せて。座席の前にしゃがみ込んで。荷物も」
「ええ?なんでですか?」
「後で説明するから。俺がいいと言うまで動かないで」
訳が分からないまま俺は言うなりになって足元にしゃがみ込んだ。バッグも下に落とした。
運転手はちらっとこっちを見てそのままでねと言った。
窓の外は空しか見えない。やがて右に曲がったようだった。直進する。ほどなく林に入ったと見え窓に木の茂みが流れていった。
林を抜けるのに結構長くて30秒くらいかかった。運転手はあれきり無言のまま。
いつまでこうしてなきゃならないんだろうと思いながらも喋りかけ辛くてしゃがんでいた。
ふっと嫌な想像が頭を掠めた。このままさらっていく気じゃないだろうな。こっそり外を見ようか。そろそろっと頭を上げ始めた時、運転手が言った。
「着いたよ」
外を見るとそこは確かにネカフェの前だった。
「ありがとうございます」
メーターは回ってなかった。運転手は初乗り料金を告げ俺は払った。
このまま降りようかと思ったがやっぱり気になってなぜしゃがませたのか、そもそも最初の合図は何だったのかを訊いた。
「いたんだよ、あそこに」
「え、どこですか?」
「林を通っただろ?あそこな、時々おかしな奴らが待ち伏せしてるんだよ」
「待ち伏せ……」
「通りかかった奴を殴ってボコボコにして身ぐるみはいでレイプして、もう何人も被害に遭ってる。男も女も」
「ええ?!何ですか、それ。警察は?」
「捜査してるはずだが、一向に捕まらない。暗くて目撃者もいないせいか、他に何かあるのか。何にせよ地元の人間は夜は決して徒歩や自転車で通ったりしない」
「とにかくそれで合図を?」
「もう林まで近かったから、あからさまに停まったらバレる。獲物を奪ったと追っかけてこられたら面倒だからな」
「しゃがんだのも僕を乗せてることを隠すためだったんですね」
「ああ。じゃもう帰るから」
「あっ、最後に一つだけ。なぜ今夜いると判ったんですか?」
「血がね。ライトで見えたんだ。まだ乾いてなかった」
この怖い話はどうでしたか?
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- 怖っ………ななしん
- もし、タクシーの中で見つかったら、運転手は、どうすれば、いいの?物好きの魔女
- そんな凶悪犯罪が頻発してたら警察も毎晩警戒するんじゃねーの 日本の話?菜々氏
- 幽霊じゃなかったの⁇ブルー
- そんな大学生はいませんけどね。権
- かはり人間が一番怖っ!Tomy
- さすがに毎度、同じ場所で集団レイプしてたら捕まるだろう。泣き寝入りせず被害届出せばね。
- 怖すぎだろ。れん
- 幽霊じゃなく、チンピラかよHAORI
- 怖すぎます匿名ちゃん