
中編
廃墟となった精神病院
ひろ 2019年8月6日
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ガン・・・・・・ガン・・・・ガン・・・・・・・ガン・・ガン・・・・・・
音は断続的に鳴り響いています。
その音はあたかも入院患者が檻を叩きながら、「ここから出してくれ」と訴えているようで、とても恐ろしい不気味な音でした。
ガン・・・・・・ガン・・・ガン・・・・・・・ガン・・・・・ガン・・・・
音は鳴りやむ気配がありません。静まり返った廃墟の地下。その音は異様なまでに大きく聞こえました。
ここから地上へ戻るためには、どうしたってその音が鳴るほうへ引き返さねばなりません。
H氏は恐怖の絶頂に達しましたが、意を決して振り返りました。
すると、さっきまで檻の内側にあったはずの車いすが、廊下に出ていたのです。
無人の車いすが、十数メートル向こうでこちらを向いていました。
音は、その車いすのすぐ隣の檻から聞こえていたのです。
「!!!!!!」
声にならない悲鳴を上げ、H氏は一目散に駆け出しました。
車いすの脇を通り過ぎる時は檻と反対側に顔を向け、全速力で駆け抜けました。
ガン・・・・ガン・・・・・・・・ガン・・・・・・・・・・・
音がどんどん遠ざかっていきます。
階段を駆け上がり、フロントを通り抜け、H氏は死にもの狂いで屋外へ逃げ出しました。
その瞬間、右肩がずしりと重くなり、激しく痛みました。誰かに物凄い力で握られているような感じがしたそうです。
半泣きになりながらH氏は停めていた車に乗り込んで、その病院跡を離れました。
しかし右肩はその後もずっとずきずきと痛み、数日後も良化しなかったので、神社でお祓いを受けたそうです。
するとお祓いをした翌日から痛みが引いていき、数日後には完治したそうです。
H氏の話を聞いて、私はかなりぞっとしました。
私とH氏が経験した右肩の痛み。そしてH氏の見た車いす・・・。
現在ではその病院跡は解体され、住宅地となっています。
廃墟探索には怪我以外にもそういったリスクがあることを思い知らされた出来事でした。
今では、私はもう廃墟へは行っていませんが、H氏は現役で廃墟探索を続けています。また何か面白い話が聞けるかもしれません。
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