
新着 短編
空気の続き
夜更けの住人 2日前
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ここは、誰かが最後に息をした部屋です。
今日は、ある古いアパートの空室の修理をしてきた。落ち着かない気持ちで、扉を開けると、いつものように薄暗い廊下が広がっていた。うん、少し匂いがする。なんていうか……湿気と埃、昔の人の生活の名残りみたいな。これを綺麗にして、新しい住人を迎える準備をしなきゃ。
まずは掃除から始める。ホコリをかぶったフローリングをこすりながら、ふと目に留まったのが、放置されたままのカーテン。色あせた花柄。思わず、指で触れてみる。……ああ、やっぱり冷たい。触った瞬間、どこか懐かしい記憶がよみがえるような気がした。たぶん、誰かがここで幸せに過ごしていたのかな。
その後、壁の剥がれた部分を修理していると、耳元で小さな音がした。……音はした。でも、何もなかった。風の通り道でもないのに、確かに息遣いを感じるような気がしたんだ。さっきのカーテンのせいかな?
作業を進めながら、ふとこの部屋に住んでいた人のことを考えた。彼女はどんな人だったんだろう。年齢や職業、趣味、好きな食べ物。
それにしても、あのカーテン。何かのメモかと思って、開けてみたけど、ただの埃が舞っているだけ。それでも、どこか温かい気持ちが残る。どうしてだろう。あの部屋には、まだ“空気の続き”があるんだ。
作業を終え、部屋を出るとき、最後にもう一度振り返った。静かに物がない空間に、思いを馳せる。あの人の痕跡がどこかに存在していると思うと、少し怖いけれど、同時に安心するような気もする。怖くはない。ただ、静かすぎるだけ。
この部屋が、また誰かの新しい居場所になることを願って……。ああ、今日もいい一日だった。……まあ、そういうことだ。
その後、体験をブログに記録する。まるで自分のことのように、彼女の痕跡を言葉で表現する。読者にはどう伝わっているのかな。反響もいくつかあった。気になるのは、あの部屋に住む新しい人が、何を感じるのか。それと、彼女の思い出をどう受け止めるのか……。
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