子供の頃、祖母に何度も言われる事があった。 「家にいる時、名前を呼ばれても絶対に外に出ていってはいけないよ。」 兄弟みんな小さい頃から言われてた。 防犯の為に言ってるなら分かるんだけど(誘拐とかね)、 どうもそういう感じじゃなかった。 人では無いモノが名前を呼んで外に連れ出す事があるという。 実際に姉(長女)が小さい頃、名前を呼ばれて外に出て行こうとした事があって祖母が気付いて止めたらしい。 「ふーん」てな感じで、1つ下の弟と一緒に話し聞いてたけどね。オレらまだ小さかったし。 その弟が中3の時、両親は泊まりの仕事に出てて、他の家族も留守で、オレと弟2人だけ家で留守番してる時があったんだ。 他の家族がいないんで、夜中まで好き勝手に過ごしてた。 リビングでオレは漫画読んでて、弟はテレビ観てる時だった。深夜2時近い時間だったと思う。 テレビ観てた弟が突然スッと立ち上がって家を出て行ってしまった。 番組も途中なのに、無言で出て行った弟を見て 「??どこ行くんだアイツ??」 と思って、しかも深夜だし危ないから後を追いかけた。 田舎の方だもんで、街灯も無くて真っ暗の中スタスタ歩いて行く弟。 そんなに遠くまでは行ってなかったんで、すぐ横に追いついて「お前どこ行くんだよ」と声をかけた。 すると、「いや、呼ばれたから。」と言ってそのまま歩いてく。 ついて行きながら「は?誰に?」と聞くと 「いやわかんないけど。」と言う。 意味がわからなくて、そもそも一緒に家にいたオレからすれば、何も聞こえてないし突然家を出て行ったようにしか見えない。 こんな深夜に人と会う約束もないだろうよ。 「いつ誰が何て呼んだんだよ?」と聞いてみると「○○〜。○○〜。(弟の名前)って、ずっと呼んでる。」 無表情で答える弟を見てちょっと怖くなったので「とりあえず家戻れ。」と連れ戻した。 その間も、でも呼んでるから行かないととか言っていたがちょっと会話にならないので無視した。 家に帰ってからリビングのソファーに座らせて、まだ呼んでんの?と聞くと、「あれ?もう聞こえない。」と普通に答えた。 そこで小さい頃に祖母に言われてた事を思い出して、「もう外に出んなよ。そろそろ寝るぞ 」って内心ビビりながら鍵閉めて寝た。 次の日、弟も祖母の言葉を思い出したらしく、「昨日ゴメン、覚えてるわ。行っちゃダメなの知ってたはずなのにな。女の人の声がオレの名前呼ぶからそっちの方に歩いてくと、声も遠ざかってくんだよ。何も考えらんないでただ声のする方に向かって歩いてたわ。今思い返したらゾッとする。」と話してくれた。 亡くなった祖母の言う事を話し半分で聞いていたオレたちは、「ばあちゃん言ってたの、ホントだったんだな。」とちょっと申し訳無く思った。 でも本当にヤバかったのは、 弟より姪っ子の方だったかも知れない。 この出来事から数年後、オレらが大人になってから姉(次女)の子供にも似たような事があった。 その当時姉は、旦那さんと娘の3人で隣りの市に住んでいた。これは後から姉に聞いた話し。 姪っ子が3歳になったばかりくらいの時。 その時住んでたアパートは玄関開けてすぐダイニングキッチン。その奥にふすまの付いた和室があって、寝る時はその和室に布団を敷いて、ふすまは開けっ放しにして寝ていたらしい。 で、親子3人川の字になっていつものように寝ていたら、夜中に玄関からガチャガチャ、ガチャン。って物音が聞こえて姉が目を覚ました。 誰か玄関のドアで何かしてる?と思って隣りを見ると、娘がいない。 あれ!?と思って玄関の方見たら、娘がドアを開けて外に出ようとしていた。 姉は慌てて玄関に走って娘を中に引き入れたらしい。「何してんの!どこ行くの!」って聞いたけど、それには答えずに、姉にしがみついてそのまま眠ってしまった。 起こす訳にもいかず、布団まで抱っこして連れていって、心配だったからしばらくは起きて横で様子を見ながら、姉も寝た。 朝起きてから昨夜の事を聞いてもよくわからない様子。本人は何も覚えていないようだった。 姉は、「何が怖かったって、誰が鍵開けたのかって事。娘はまだ鍵の開け方知らないし、そもそもまだ小さいからドアノブには手が届いても鍵には絶対手ぇ届かないんだよね。」と言ってた。 姪っ子本人は覚えてないし、名前を呼ばれて外に行こうとしたのかどうかは分からない。 でも、オレと弟はこの話しを聞いた時、姪っ子も呼ばれてしまったんだろうなと思った。 何が呼んでいるかもわからないし、自分が住んでた地域特有の言い伝えとかでもない。 小さい頃にオレらが住んでた場所からはとっくに引っ越してて、弟と姪っ子が体験したのは昔住んでた場所からかなり離れてて、全然違う場所だったしね。 ...