
長編
中仙道西○△怪談/暗渠
チコ 2018年7月12日
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ではないように思えてきたが、真犯人が誰か見当が付かなかった。
9.暗渠
数年後、職場で回覧されてる業界新聞に、真相に繋がる記事を見つけた。
記事によると、20世紀末のある嵐の日、A体育館付近の暗渠内で、建設工事に従事していた作業員が台風による増水で流され、行方不明になったという。
東京は江戸と呼ばれた昔、水路が張り巡らされた「水の都」であった。
20世紀になり、水路は道路交通の邪魔になるので多くは埋め立てられた。
しかし水路には排水の役割もあるので、全部埋め立てると台風などの増水時は排水が滞り、街が水浸しになってしまう。
よって天然の小川など排水機能が高い水路は、埋め立てず、水路の上に道路や公園を作って蓋をした。
このように人工的に地下水路化された水路を暗渠というらしい。
東京には無数の暗渠が複雑なネットワークを形成していて、その全貌は誰にも分らないらしい。
暗渠内の水路に流されると、どこへ流れ着くか全く見当がつかず、遺体が見つかることはないという。
暗渠内は空気も悪く、酸欠のおそれもあるというから、「カリオストロの城」の地下牢みたいなもので、まさに「生ける者の赴く所ではありませぬ」。
ダイバ-が暗渠内の地下水路を潜って探すのは、自殺行為に近い。
10.真相
肉体への執着心から、行方不明の作業員の霊は、冷たい水底を漂う遺体に閉じ込められ、悪寒に苛まれていたのであろう。
悪寒から逃れるため、有り余る体脂肪を備え、高血糖ハイオク血液を漲らせて泳ぐ私に憑依したが、危うく共倒れになりかけた。
作業員の中には八高線沿いの住人もいたのかもしれない。
C様墓所で憑依が解け、私は悪寒から解放され、作業員の霊も冷たい水底を去って成仏したのが真相だと思う。
末尾ながら、水害の犠牲となった全ての方々のご冥福を心よりお祈りします。
合掌
後日談:
- 西◎△の因縁話は他にもあります。
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- いろいろ複雑でしたけど、面白いですね。時雨